都市伝説?うわさ話?ロバートジョンソンの人生から学ぶ、有名になる方法!都市伝説の主役に俺はなる!
皆さんはじめまして、ブルースに取りつかれて青春をないがしろにしてきた、中尾といいます。せっかくのデートで、レイチャールズの映画を見に行って、微妙な空気になったあの日は、忘れられません。あの映画長いんですよ、2時間半って。軽く別れの原因になってもおかしくないと思いませんか?
さて、今回は、「ロバートジョンソン」を題材に、伝説の作られ方について考えていきたいと思います。
結論をいうと、伝説は実力、実績ありきで作られます。
ディテールは、成果をもとに、勝手に紐づけされていくものです。
ロバートジョンソンって何だ?誰だ?という人の為に、彼の世間的なイメージ、概要というのを、まとめてみました。
・職業は、ブルースミュージシャン。
・キングオブデルタブルースの異名を持ちます。
・ローリングストーン誌の、偉大なギタリストランキング71位にランクインしています。(以前のランキングはもっと高かったはずだが、ランクダウンした?譜面の解読が進んだから?)
・都市伝説「クロスロード伝説」の主役となる人物です。(日本人にはあまり馴染みがありませんが、アメリカでは誰でもが知っている都市伝説です。)
・いわゆる27クラブの創立メンバーとなります。(優れたミュージシャンは、27歳で死ぬ確率が高いという伝説です。)
・数々の有名ミュージシャンが、彼の曲をカバーし、ヒットを飛ばしています。
ここまでの概要で、なんとなくすごい人なんだなあと思っていただければ大丈夫です。
普通に日本で暮らしていると、ロバートジョンソンの微かな片鱗に触れることはあっても、がっつり興味を持つ対象にはなかなかならないと思います。
ロックや、音楽が好きな人は別としてですが。
では、ロバートジョンソンの核となる、「クロスロード伝説」について説明していきたいと思います。
夜の12時、四辻(交差点)に立ち、ギターをひとくさり弾いてみる。
そうすると、黒い大男がやってきて、契約を持ち掛けてくる。
契約とは、寿命と引き換えに、超絶的なギターのテクニックを手に入れることができるというものだ。
これがいわゆる、クロスロード伝説です。
バリエーションは他にもあって、契約ではなく、大男がギターをひとくさり弾くと、自分もできるようになっている。
とか、時間の指定が細かかったり、場所の指定があったりとかです。
何にしろ、ロバートジョンソンは、悪魔と契約して、人々を圧巻する技術を身につけたとされています。
これはもちろん、あくまで都市伝説にすぎません。
悪魔とか出てますしね…。
ではなぜ、このような伝説が作られ、ロバートジョンソンは神格化されていったのでしょうか?
ロバートジョンソンは、ミシシッピのデルタ地帯の、綿花畑の中に生まれます。
ですが、綿花の白い無限地獄の中で働いて、一生を終えることに嫌気がさし、流れのブルースマンとして生きる道を志します。
学校や、義父の畑で仕事をしていたこともあったそうですが、やる気がなく、使えないやつと評価されていたみたいです。
ギターを手にするまでは、ハーモニカや、「ディドリーボウ」を演奏し、音楽の基盤を養っていました。
ディドリーボウとは、木材や壁に、60cm~90cmくらいの間隔で釘を打ち、そこに針金を張った楽器です。
その針金に、瓶やナイフを滑らせて音を出す、いわゆるスチールギターのスライド奏法みたいなことをやるものらしいです。(ちょっと欲しいです。)
その後ギターを手にして、すぐに上達し、旅のブルースマンとして生活に困らないくらいに成長していきました。
同時代のブルースマン、特に長いこと一緒にいたらしいジョニーシャインズは、彼の性格をシャイで、捉えどころのないやつだったと言っています。
シャイとはいえ、旅のブルースマンとして人前で演奏を披露する、演者の振る舞いはできていたようです。
その後レコーディングを行いますが、彼の生きているうちに、その音源が爆発的に売れることもなく、日の目を見ることなく、27歳の若さで死んでしまいます。
1938年のことでした。
・・・あれ?伝説はどこで?ってなりますよね?
ロバートジョンソンは死んでしまいましたが、この時点では、「クロスロード伝説」は一切出てきません!
クロスロード伝説がクローズアップされるのは、この20年以上後となります!
ロバートジョンソンの死後、アメリカではエレキギターが主流となり、ロックへ音楽の流れが向かっていきます。
エルビス、チャックベリー、バディホリーの活躍と、1950年代末には、有名なロックンロールが死んだ日事件がありました。(ざっくり省略しすぎ!)
その後、時代はフォークへ流れていきます。
ボブディランとかが人気になり、フォークファン達は、より「信憑性」のあるフォークを探し始めました。
その時代にうまくマッチした、レッドベリーやライトニングホプキンス達が、カントリーブルースを確立していきました。
そうするとどうでしょう、夢中になったアメリカ人たちは、昔のフォークブルースシンガーを探し始めたのです。
そのタイミングで発行された雑誌にロバートジョンソンが載り、1961年に、昔のレコーディング音源をもとにレコードが発売されました。
ここで初めてロバートジョンソンの音楽が広まり、独特なギターと表現力のある歌声に、世界が驚愕しました。
一人で弾き語りしてるのですが、二人に聞こえるとか。
いったいこいつは何者なんだと。
そして伝説は語られ始めます。
彼の作った曲には、「クロスロードブルース」や、「俺と悪魔のブルース」といった、悪魔を題材にした曲がありました。
ですがこれらは、内容を紐解くと、決して悪魔と契約する歌ではありません。
クロスロードブルースは、決断を迫られる曲だし、俺と悪魔のブルースは、ほかのブルースマンが歌っていた曲の改変です。(当時は悪魔を題材にした曲がよくあった。)
近い時期に活躍した、「トミージョンソン」という人物がいました。
彼は弟に、悪魔に身売りして、ギターの腕を手に入れたと話します。
彼は、ロバートジョンソンとは何の関係もない人物です。
この大したことない談話が、ロバートジョンソンに紐づけされ、ロバートジョンソンの曲とあわさり、いわゆる最高の演出を生みました。
こうして都市伝説は完成し、伝説を煽る謳い文句とともに書籍が発行され、グッズが販売され、多大な影響力を及ぼしていきました。
実際、当時ロバートジョンソンと過ごしていた仲間たちは、そんな話は一度もしたことがないと証言しています。
・・・ですがそんなの、ビジネスには関係なかったのかもしれません。
しかし大事なところは、ロバートジョンソンのレコードを聴いて、誰もがそれを信じたことにあるとは思えないでしょうか?
(私も初めて聞いたときは、素直になるほどなあって思ってました。)
つまり、この都市伝説が完成するためには、下記の条件を満たしていることが必要だったのではないでしょうか?
・超越したギター、歌のテクニック
・流れのブルースマンとして、生きていける実力
・実力をもとにこぎつけた、レコーディングの実績
ロバートジョンソンは、ブルースマンとして成功するために、たくさん練習したし、いろいろ曲の勉強をしていたんだと思います。
そして成果を出し続け、日銭も稼ぎ、レコーディングに漕ぎつけました。
日々の生きていくための努力が、死んで20年後の伝説になったのだと思うと、すごい話に思えませんか?
ミュージシャンとかだとよくあることだと思いますが。
会社でもこんな人っていませんか?(死んでなくても)
あの人が関わった案件は必ず成功する、とか、あの人は裏でなにかやばいことやって成功してるんじゃないかとか。
でもたぶん、当人は一生懸命仕事してるだけですよね?
日常の仕事の質が、当人の成果、人間性と混じり合って、うわさ話が確立されキャラクターになっていくんだと思います。
その後ロバートジョンソンについては、写真の所有権をめぐって莫大な金額が動いたり、息子の登場によってまた金が動いたり、未発表曲の入ったCDが発売してめっちゃ売れたり、伝説が途切れることはありませんでした。
あ、映画とか書籍も多数発売されています。
(この辺も面白いのでもっと話したいですが!)
まとめると、普段の活動の成果と、その時の社会環境と、人間性(方向性?のようなもの)がうまく嵌ったとき、極上の都市伝説が生まれるのだと思います。
ロバートジョンソンのすべらない話をもっと語りたいのですが、それはまた今度!
ここまで読んでいただきありがとうございました。
センターテイルファクトリー 中尾